《兄弟》

明後日にはテストがあるというのにテスト勉強を放り出して余華の「兄弟」を読み始めてしまった。普段本を読むのがとても遅く、一冊読むのにおそらく人の何倍もかけてしまう私は逆にどハマりすると他のことなど気にかけずに一気に読んでしまうのだ。

「兄弟」の上巻はすでに去年読み終わっていた。その時もあまりの面白さにずっと読んでいたが、なにせ長い。一冊500ページはあるので上下合わせて1000ページは超える。何分割にもして数カ月にわたって読んだら放置、読んだら放置という風にして読み切ったのだった。面白いことは間違いないのだがなにせ時間がかかって仕方ない。だから下巻もずっと放置していた。つい最近再開した。つい1週間ぐらい前だろうか。最近急に読書欲が復活してきたためこれを機に一挙に読み始めた。もちろん課題は毎週怒涛のように襲ってくるがそんなの構わず、授業が終わったら図書館で読む、歩いている時も読む、電車でも読む、駅から家までも微かな街灯の明かりを使いながら読む、ご飯を食べながら読む。

至福だった。やるべきことは沢山あるのに本を読むことが快感だった。話の展開に自分の気持ちも上下しながら早く続きが読みたくてたまらなくなり、ちょっと隙ができるとひたすら「兄弟」を読み続けていた。

気がつくと時計が3時を指していた。読み始めて1週間、下巻ももはやあと70ページぐらいしかなさそうである。普段から他の本もこんなに早く、興奮しながら読めたなら一生のうちでどれだけ多くの本を読めるだろうか。残念ながら明日も2限があるのでもう寝なくてはならない。

なんだか久しぶりに熱中するものを見つけたような気分だ。それは長いこと感じていなかったものだった。

「兄弟」を読んでいる時、時折大切な人を思い浮かべていた。今何をしているのだろう。どこにいるのだろう。連絡するタイミングを逃してしまった。そもそも見ているのかもわからない。ただあの人の顔を思い浮かべることぐらいしか私にできることはなかった。

2019年7月10日 AM3:19