上海
私は時折同じ夢を見る。
それは悪夢とは言えないが、気分が悪くなる夢だ。
たった今同じ夢を見て深夜に目が覚めたので忘れる前に書き記しておこうと思う。
それはいつの世界かはわからない。
世界には私と、ロボットしかいない。
その夢の中では、まるでハリー・ポッターの中に出てくる箒のようなもので空を飛んで自由に移動できる。
ここで話が飛ぶ。
私はある人間のようなロボットに遭遇する。しかし彼は結局ロボット。彼と何を話していたか覚えていないが、充電切れで途中で彼は死んでしまう。
悲しくなって、必死に起きろと揺さぶるが、電子状の彼の目は次第に壊れたロボットさながらにパチパチと音を立てながら目のホログラムが消えていく。
私は悲しくなってまた箒に乗って空を飛ぶ。いつしか見覚えのあるビルヂングに遭遇する。以前別の夢で屋上にお金を置いておいたビルヂングだ。私はそのお金のことを思い出し、嬉しくなって箒を飛び降りた。お金はやはりそのまま置いてあった。必死になってお金をかき集める私はあることに気づいた。この世界でお金なんか不要なのに、私はなぜこんな悲しいことをしているのだろう。その時私の脳裏に、まだ私以外に人がいた時の映像が走馬灯さながらに流れ始めた。私の大切な人達がたくさん映像に出てきた。どうやら私は宇宙旅行者か何かである設定のようで、ここは地球ではなく、もう私の知っている地球には戻れなく、この孤独なプラネットの上で死ぬしかないという運命らしい。私は泣いていた。ここはどこなのだろう。家に帰りたい。しかもおかしなことにここは地球であるらしい。未来に来てしまったのだろうか。
そこでどこからともなく男が現れる、ロボットか人間かはわからない。彼は言い放つ。しかし何を言ったか、今まさに書きとめようとしているというのに忘れてしまいかけている。
「お金なんてこの世で意味のないものなのに、生きているうちに使うべきだったね。」
何を言っているんだ、私はまだこうして生きているじゃないか。
「君は本当に、生きていたの?」
なぜ過去の話であるかのように言うのだろう。この男は私がすでに死んでいるかのように話をしている。
ここで目が醒める。午前2時23分。寝始めてから、2時間も経ってない。真っ暗な部屋の空気を見つめながら、次第に夢だったとわかる。そして、地球に戻ってこれて良かったと安堵する。私は大切な人にまた悪夢を見て起きたとだけ送っておいた。
それと同時に、この夢について考え始めた。書き記しはしたものの、これでも夢の内容を半分も捉えていない。この夢は、とてつもなく重く私の心に引っかかった。たったの2時間が、永遠で、無限に広がる孤独に感じられた。
「君は本当に、生きていたの?」
私はこの現前たる現実でも、孤独に生きていこうと決めていた。しかし、それはつい9時間ほど前までの話である。
冷静に思い返すとこの夢は地球ではないどこかなのに、地球の現実世界を反映しているかのようであった。人間は皆ロボットのように働き、お金を必死に集めて生きていき、年老いて死んでいく。これは本当に生きているのだろうか?生きていても死んだも同然じゃないか。そして私が演じる宇宙旅行者もまさに私自身であった。ロボットのような人間に囲まれて、孤独に旅をしながら、なぜ生きているのだろうと旅先で日々ヒントを探しているが、当然答えなど見つかるはずがない。
つい9時間ほど前、私は孤独でいることをやめた。孤独を共有してくれる人を見つけた。しかしそれでもまだ孤独なのかもしれない。わからない。人間は元来孤独な生き物なのだろうか。
生きる、とは何なのか。